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ゼロから学ぶGIGAスクール構想|メリットや今後の課題をわかりやすく解説

ゼロから学ぶGIGAスクール構想|メリッ...

2022.06.30

GIGAスクール構想

社会全体の情報化が急速に進む中、わが国の教育現場のICT化は一般社会からも海外の教育現場からも大きな後れをとっていました。

そんな中、文部科学省が2019年12月に打ち出した教育現場でのICT活用の取り組みが「GIGAスクール構想」です。

本記事では、

  • 「GIGAスクール構想って何?」
  • 「メリット・デメリットが知りたい」

とお考えの方に向けて、

  • GIGAスクール構想の目的
  • GIGAスクール構想のメリット・デメリット
  • 現状と今後の課題

をわかりやすく解説します。

GIGAスクール構想とは

「GIGAスクール構想」とは、2019年に文部科学省によって打ち出された、教育現場のICT化を推進し、子どもたちに個別最適化された教育環境を提供する国家プロジェクトです。

「GIGA」は「Global and Innovation Gateway for All」の略で、「すべての子どもたちがグローバルで革新的な扉を開ける」ための環境を整える、という意味を持っています。

GIGAスクール構想の「目的」や「背景」、「取り組み」を見ていきましょう。

目的:個人に最適化された教育

文部科学省では、GIGAスクール構想の目的を以下のように定義しています。

  • 1人1台端末と、高速大容量の通信ネットワークを一体的に整備することで、特別な支援を必要とする子供を含め、多様な子供たちを誰一人取り残すことなく、公正に個別最適化され、資質・能力が一層確実に育成できる教育ICT環境を実現する
  • これまでの我が国の教育実践と最先端のICTのベストミックスを図ることにより、教師・児童生徒の力を最大限に引き出す

(引用:文部科学省「(リーフレット)GIGAスクール構想の実現へ」https://www.mext.go.jp/content/20200625-mxt_syoto01-000003278_1.pdf

つまり、ICTの活用環境を整備し、子どもたち一人ひとりの学習状況や理解レベルに合わせた教育を実現することを目的としています。

背景:ICT教育の後れ

国がGIGAスクール構想を打ち出した背景には、日本のICT教育の後れがあります。

2018年の調査では、日本の学校での授業におけるデジタル機器の利用時間は、OECD(経済協力開発機構)加盟国中最下位でした。
モバイル端末の普及率は高いものの、学校外での利用は娯楽がほとんどす。

「(リーフレット)GIGAスクール構想の実現へ|文部科学省

GIGAスクール構想の根底には、現状のままでは、日本の将来を担う子どもたちが世界のICT化の波に乗り遅れ、ひいては国力の低下につながるという危機感があると言えるでしょう。

取り組み:ハード以外の整備も重要

文部科学省によるGIGAスクール構想の主な取り組みは次のとおりです。

GIGAスクール構想
ハード ・児童生徒1人1台コンピュータを実現
・高速大容量の通信ネットワーク
・全国の自治体や学校がより容易に、より効率的・効果的な調達ができるよう支援
ソフト ・デジタル教科書・教材など良質なデジタルコンテンツの活用を促進
・各教科等ごとにICTを効果的に活用した学習活動の例を提示
・AIドリルなど先端技術を活用した実証を充実
指導体制 ・教職員支援機構による,各地域の指導者養成研修の実施
・ICT活用教育アドバイザーによる,各都道府県での説明会・ワークショップの開催
・ICT支援員など,企業等の多様な外部人材の活用促進

(出典:教育の情報化 ~GIGAスクール構想の実現に向けて~ https://www.mext.go.jp/content/20200731-mxt_kouhou02-000009140_07.pdf

端末やネットワークなどのハード面の整備はもちろんのこと、ICTを活用した教材などのソフト面、ICTを効果的に活用するための人材の整備も重要となります。

GIGAスクール構想で利用できる端末については、下記の記事からご覧いただけます。

GIGAスクール構想で利用できる端末の仕様は?各OSの違いやシェアを紹介!

GIGAスクール構想のメリット・デメリット

GIGAスクールのメリット・デメリットを見てみましょう。

GIGAスクール構想のメリット

1人1台の端末とネットワークを整備するGIGAスクール構想によって、教育現場にどのようなメリットがあるのでしょうか。

次に2つの観点で解説していきます。

  • 学習効率の向上
  • 教員の負荷低減

学習効率の向上

ICTの活用により、子どもたち一人ひとりの、教育ニーズや理解度に応じた学習が可能となります。

従来は、理解度の関わらずクラス全員が同じスピード・内容の授業を受け、一部の積極的な子どもだけが授業に参加する状況でした。

1人1台の端末を導入することで、個人の理解度に合わせた内容の学習や、端末を介して主体的に意見交換するアクティブラーニングが可能です。

また、2020年からはじまったプログラミング学習でも、机上で学ぶだけでなく、実際にプログラム動かせる環境が身近に整うことで、より理解が深まるでしょう。

文部科学省では、ICTの「学び」への活用事例として次のものをあげています。

“すぐにでも” ”どの教科でも” ”誰でも”使えるICT ・検索サイトを活用した調べ学習
・一斉学習の場面での活用
・文章作成ソフト、プレゼンソフトの利用
・一人一人の学習状況に応じた個別学習
“1人1台”を活用して、教科の学びを深める。教科の学びの本質に迫る。 国語 ・書く過程を記録し、よりよい文章作成に役立てる
算数
数学 
・関数や図形などの変化の様子を可視化して、繰り返し試行錯誤する
社会 ・国内外のデータを加工して可視化したり、地図情報に統合したりして、深く分析する
理科 ・観察、実験を行い、動画等を使ってより深く分析・考察する
外国語 ・海外とつながる「本物のコミュニケーション」により、発信力を高める
“1人1台”を活用して、教科の学びをつなぐ。社会課題の解決に生かす。 ・ICTを含む様々なツールを駆使して、各教科等での学びをつなぎ探究するSTEAM教育
※STEAM教育:Science, Technology, Engineering, Art, Mathematics等の各教科での学習を実社会での課題解決に生かしていくための教科横断的な教育

(出典:文部科学省「(リーフレット)GIGAスクール構想の実現へ」https://www.mext.go.jp/content/20200625-mxt_syoto01-000003278_1.pdf

教員の負荷低減

GIGAスクール構想は、子どもたちの学習面のメリットだけでなく、教員の働き方改革を進める効果も期待されています。

教員の仕事は授業だけでなく、授業準備や課外活動、事務作業、保護者対応など多岐に渡ります。

労働環境の悪さが世間に認知され、教員のなり手不足が問題となっていることはご存知でしょう。

そのような教員の業務にICTを活用することで、次のような業務効率化が図れます。

  • 教材のデジタル化で、プリントの作成や印刷する負荷を削減
  • 一人ひとりの子どもの学習状況を記録し、情報管理を効率化
  • 子どもや保護者、教員同士の情報共有を効率化

など

ICTの活用で教員の負担を低減し働き方改革が進めば、教員という職業の魅力が高まり、なり手の増加につながることも期待されます。

GIGAスクール構想のデメリット

GIGAスクール構想には多くのメリットがある反面、

  • 新たなトラブルを生む可能性がある
  • 教員や保護者の負担が、かえって増える可能性がある

といったデメリットもあります。

配布された端末を使った不適切なサイトやアプリへのアクセスや、SNSでのトラブルを心配する保護者は多いでしょう。

自宅への持ち帰りを禁止したり、アクセス制限を掛けたりすることも可能です。しかし、制限を掛けすぎることは、子どもたちのITリテラシー向上の妨げになるため、バランスが大切です。

また、子どもたちに教える側の教員や保護者のITリテラシーも、人によりさまざまです。

ICTを活用した学習の取り組み方や、端末の扱い方を事前に十分説明する必要があります。うまく使いこなせないと逆に非効率になったり、使いこなせる家庭の子供との格差が広がったりすることも懸念されます。

GIGAスクール構想の現状と課題

GIGAスクール構想の現状と課題を見てみましょう。

これまでの流れ

GIGAスクール構想は、2019年12月に文部科学省から発表されました。

そのベースとなる「教育のICT化に向けた環境整備5か年計画(2018〜2022年度)」では、最終年度の翌年2023年度までに1人1台の端末環境を整備することが目標でした。

しかし、2020年に発生した新型コロナによる長期休校への対応のため、前倒しでの環境整備を余儀なくされます。

その結果、2021年8月時点で全国の公立小学校の96.1%、公立中学校の96.5%まで端末の利活用が進みました。

GIGAスクール構想に関する各種調査の結果|文部科学省

また、校内ネットワークの供用も98%の学校が対応済となっており、小中学校における端末・ネットワーク面の整備はほぼ完了していると言えるでしょう。

新型コロナの感染拡大は多くの被害を出しましたが、図らずも、必要に迫られたことでリモート学習環境の整備が一気に進む結果をもたらしたのです。

課題

計画よりも前倒しで進んだGIGAスクール構想ですが、ハード、ソフト、指導体制の面でそれぞれ課題も見えてきています。

実は10年以上前の2009年にも、教育のIT化をうたった「スクールニューディール政策」という構想がありましたが、ICT環境整備は進みませんでした。

今回のGIGAスクール構想では、コロナ禍の影響もあり端末導入までは進んでいます。この後はソフトと体制を整えて、ICTを真に活用するフェーズに移せるかがカギとなります。

ハード

端末やネットワークなどのハード面では次の2つの課題があります。

  • 高校における環境整備
  • 通信環境の改善
高校における環境整備

高校の導入状況は自治体によって差があります。
義務教育である小中学校の端末整備費用は国が全額負担するのに対し、高校では部分的な補助にとどまることが原因です。

高等学校における学習者用コンピュータの整備状況について(令和4年度見込み)|文部科学省

そのため、ICT環境が整っている中学校から整っていない高校へ進学する場合、ICT教育が途切れる可能性もあります。

導入が遅れている自治体では、保護者負担で個人所有の端末を利用する「BYOD」の導入など、整備を推進しています。

端末利活用状況等の実態調査(令和3年7月末時点)(速報値)|文部科学省

BYODについては、下記の記事で詳しく解説しています。

BYODとは?メリット・デメリットや導入までの流れを解説

通信環境の改善

授業でのICT機器の利用が進んだことで、通信環境の問題も顕在化してきました。

1人に1台端末が配布され、授業での利用が増えると、ネットワークへの負荷が増大します。

当初文部科学省が推奨していた、教育委員会や自治体のセンターを介してインターネットに接続する「センター集約方式」では、負荷が集中する時間帯には通信が遅れたり切断したりといった問題が出てきました。

そこで、現在では「ローカルブレイクアウト方式」を推奨しています。

方式 仕組み 特徴
センター集約方式 インターネットへの接続ポイントを一か所に集める セキュリティ対策を1か所にまとめられる反面、通信のボトルネックが発生する
ローカルブレイクアウト方式 通信内容に応じて、各学校のサーバから直接インターネットに接続する センター集約方式のようなボトルネックが減らせる一方、学校ごとにネットワーク機器やセキュリティ対策が必要

また商用基地局がないエリアでは、自治体等が独自に5G基地局を設置できる「ローカル5G」の教育利用も検討されています。

ソフト

次にソフト面の課題です。

前述のとおり、公立小中学校での端末の導入はほぼ完了しました。しかし、端末だけがあっても学習は進みません。

現状、端末の利用は授業のサポート的な位置付けに留まっていますが、2024年度には教科書を完全デジタル化した「デジタル教科書」の本格的な導入が計画されています。

また、子どもたち一人ひとりの理解度に応じた内容で学習でき、進捗状況を容易に把握できるデジタルドリルの活用も進みます。

このようなソフトを有効活用し、ICT教育を世界水準まで高められるかが成功のカギと言えるでしょう。

指導体制

子どもたちがICTを有効に活用するには、教える立場の教員や保護者にも高いITリテラシーが必要です。

現状、自宅への持ち帰り制限や、アクセスのフィルタリングが、ICTの十分な活用を妨げることになっています。

ITリテラシー教育の機会ととらえて、どこまで子どもたちを信頼して任せるかのバランスはまだ手探りと言えるでしょう。

また、教員の働き方改革に寄与することが期待されている校務支援システムも、十分活用が進んでいません。

教員や保護者のITリテラシーは人によりさまざまです。

GIGAスクール構想成功のためには、教育現場へのICT導入を推進する「ICT活用教育アドバイザー」「GIGAスクールサポーター」や「ICT支援員」の役割は大きいと言えます。

まとめ

GIGAスクール構想は、これからのデジタル社会を生きる子どもたちに、世界水準のICT教育環境を提供するための国家プロジェクトです。

コロナ禍によって、図らずも計画を前倒しする形で端末の導入が進みました。

これからソフト面や体制面が整備されることで、もはや後戻りすることはなく、教育現場でのICT活用は当たり前になっていくことでしょう。

GIGAスクール構想で利用できる端末の仕様は?各OSの違いやシェアを紹介!

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