
新卒で伊藤忠商事株式会社に入社。携帯電話販売代理店やスマートフォン向け補償プログラムを展開するグループ会社への出向を経験。一貫して携帯電話・スマートフォン関連の事業に携わり、香港駐在時には、東アジア情報・金融グループを統括。帰国後は伊藤忠本社にてDXや生成AI事業を担う。Belong創立期にはアドバイザリーとして関わり、2025年4月に代表取締役社長に就任。趣味は投資とゴルフ。
今回は「座右の銘は『人間万事塞翁が馬』」と語る西村さんに、Belongの“これから”について聞きました。
――Belong代表取締役社長に就任するまでのキャリアについて教えてください。
1994年に伊藤忠商事に入社し、通信関連部門に配属されました。1998年からは当時浸透しはじめていた携帯電話の販売代理店を展開するグループ会社に出向し、8年間勤務しました。
販売代理店事業に関わっていた頃は、携帯電話を持っている人はまだ限られていて、自分自身も正直よくわかっていませんでした。そんななか、量販店で携帯電話を実際に販売する事業会社に出向して、営業部門の課長を務めることに。
それまでは部下がいた経験もなく、かなり自由奔放な社員だったのですが、それが突然、出向先では30人の部下を抱えることになったんです。
部下に指示を出すには自分自身が商材を理解しなければならなかったので、必死で勉強しましたね。同時に採用や評価面接も担当していたので、マネジメントに関しても現場で叩き込まれました。苦労の連続でしたが、当時の経験が今の自分を形づくっています。
――通信業界の黎明期から、深く関わってきたんですね。
そうですね。伊藤忠の情報通信事業のなかでも古株のひとりです。
その後出向したスマートフォン向け補償会社では、携帯端末補償サービスの営業責任者として、販売と企画運営に携わりました。長年お取引があった携帯キャリアの補償事業を全面的に担い、加入者数を入社以来500倍に拡大できたのは大きな成果でした。
携帯もスマートフォン業界も、今より若くて勢いがあり、自分達が働いた分だけ業績も伸びていく。その経験を通して仕事の“おもしろさ”を実感しました。それから、コロナ禍の香港駐在、本社でのDXや生成AI事業などを経て今に至ります。
じつは、その間も前任の井上大輔と前COOの清水剛志がBelongを立ち上げる際、アドバイザリーとして関わっていたんです。
――創業を見守ってきた、Belongの社長就任が決まった時のお気持ちは?
「まさか私が選ばれるとは」という驚きはありましたが、長く関わってきた会社だったので違和感はありませんでした。実際にBelongが展開している事業を会社の中から見てみると、非常に魅力的なサービスを提供していると感じましたね。これまで、創業メンバーが作り上げたものを成長させて次のステージに進めるのが、あとを引き継いだ私の役目であり、責任重大です。
我々Belongは、新しいスマートフォンの購入を検討する際、中古スマートフォンが選択肢にあることを“当たり前である世界”の実現を目指しています。自動車市場では、中古車は車を買う際の選択肢になっており、故障した場合は修理の裾野が広く対応してもらえます。しかし、スマートフォン市場では新品需要が高く、正規修理店でなければ純正部品を扱えない。最近は、価格高騰を受けて中古でスマートフォンを購入する人も増えていますが、部品に関してはまだ多くの制約があります。
当社のサービスには、市場の課題を解決して新たな常識をつくる力があると確信しており、こうした制約を超えていきたいと考えています。

――市場の常識を変えるには大きな組織力が必要です。組織力向上のために意識している点はありますか?
当社には優秀なメンバーが揃っており、Belongが掲げるミッション「Deliver next value to where we belong “大切な人に誇れる、次なる価値を届けよう”。」が浸透しています。社員達が大切な人に誇れる仕事を続けていけば、おのずと組織力も強くなっていくでしょう。
加えて、私は代表取締役社長に就任時に「明るく楽しく金儲け(コンプライアンスを守った上で)」が、私のモットーと伝えました。これは私が、15年ほど前から大切にしてきた考え方です。
やはり、言うべきことを言えて風通しが良い会社の社員は、明るく元気に、楽しく働いている。一人ひとりが能力を発揮してこそ、会社は利益を出していけるんです。お客様からお金をいただくだけの価値を提供していれば、利益が出るのは当たり前。今は、社員とのコミュニケーションを通して、そうした価値観の共有を進めている段階です。
――社員とのコミュニケーションを取る際には、どのような点を意識していますか?
積極的に“声がけ”をしています。「最近どう?」とオープンな質問を投げかけて、社員の考えや悩みを知る手がかりにしているんです。本社から離れている、座間オペレーションセンターのメンバーとはなかなか会う機会がないので、何回かに分けてランチをする場を設けました。ただ、社長という私の立場上、相手が緊張しているのもわかるので、もっと気軽に話せる関係を構築していきたいですね。地道ですが、組織づくりには必要な取り組みと考えています。
――周囲の方々を大切にする価値観にたどり着いたきっかけとは?
先述の、入社5年目で出向した携帯販売会社での経験が大きいですね。私個人は特別能力が高いわけではないと自覚しているので、部下の育成に力を入れたんです。その結果、1人の優秀な社員がたくさん売上を上げるよりも、30人の能力が伸びて、有機的に繋がったチームで動くほうが大きな成果を出せることが証明でき、ワンチームの強さを学びました。
補償会社に出向した時にも、かつて育てた部下が力になってくれましたし、「西村さんがやるならやりましょう」と協力してくださるお取引先様もいたんです。私にとっても、企業にとっても“人は財産”。これに尽きます。
Belongにも優秀な人材が育っているので、社員達の能力をさらに底上げできれば、自然と“儲かるいい会社”になるはずです。
――最後に、今後のビジョンをお聞かせください。
私達のサービスは「リユース事業」です。「リサイクル」が資源を再加工して新製品を生み出すのに対し、リユースは使用済みの製品をそのまま、あるいは修理して再利用する。
理想は、「リユース→リユース→リサイクル」。これを実践していくと、すぐにリサイクルをするよりも環境負担の軽い再利用方法なので、私達の提供しているサービスは、これからの時代にマッチしたサービスでもあります。
また、グローバルへの展開も強化していく予定です。私達が適正価格で質の高い商品を世界中に届けることで、より多くの人がスマートフォンを手にできる。そうなれば、スマートフォンの有無で生じる情報格差を埋めていけるでしょう。
今後、中古スマートフォン市場はさらに拡大するでしょう。市場の変化が激しい業界だからこそ、当社が掲げるバリュー「Be Honest, Be United, Make a Contribution」の精神を胸に、ワンチームで挑んでいきます。
