法人携帯のGPSで位置情報を監視するのは違法!?注意点を徹底解説
2022.08.23
法人携帯のGPS機能を使って従業員の位置情報を把握し、業務に活かそうという動きが広がっています。
しかし、位置情報は適切に取り扱わないと、プライバシー侵害で違法性を問われたり、従業員との間に摩擦を生んだりする可能性があるため、注意が必要です。
本記事では、
- 「GPSの活用方法を知りたい」
- 「どこまで位置情報を把握していいのか/把握されているのか知りたい」
とお考えの方に向けて、
- ビジネスにおけるGPSの活用シーン
- 位置情報を利用する際の注意点
を詳しく解説します。
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目次
GPSとは
GPSとは、「Global Positioning System」の略称で、日本語では「全地球測位システム」と呼ばれます。
GPS衛星は、高度2万キロメートルを周回しています。約30基のGPS衛星のうち3基以上から電波を受信し、各衛星との距離から位置を割り出す仕組みです。
もともと軍事用に開発された技術ですが、現在ではカーナビやスマホなど、広く一般に利用されています。
スマホでは、GPSに加えて、基地局やWi-Fiのアクセスポイントからの情報も利用することで、より正確な位置情報を得る仕組みとなっています。
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ビジネスにおけるGPSの活用シーン
企業において、従業員の位置情報を有効に活用できる主なシーンとして、次の3つがあげられます。
- 業務効率化
- 勤怠管理
- 危機管理
それぞれ解説します。
業務効率化
まずは、位置情報を活用した業務効率化です。
オフィス以外での勤務が多い職種では、位置情報を活用して自らの居場所を共有することで、迅速な要員手配や、勤務実態の証明が可能となり、業務の効率化が図れます。
例えば、現場でライフラインや製品の点検・修理を行うフィールドサービスでは、外出している技術者の位置情報を把握することで、顧客からの依頼の際に近くにいる技術者を迅速に手配できます。
また、訪問先への移動履歴が記録できれば、作業報告を簡略化することも可能でしょう。
このように、特に外回りの多い職種では、位置情報をうまく活用することで、業務の効率化が期待できます。
勤怠管理
次に紹介する位置情報の活用シーンは、勤怠管理です。
位置情報を活用することで、オフィス外の現場へ直行直帰する従業員の居場所が把握できます。報告なしに正確な勤務実態を管理できることで、管理者、現場従業員ともに勤怠報告にかかる手間を省くことが可能です。
また、外出中の「サボり」の実態を把握したり、牽制する効果も期待できます。
もし、営業員が外回り中にパチンコやネットカフェでサボっていても、企業が気付くことは難しいでしょう。
位置情報によって外出中の従業員が業務と全く関係のない場所に長時間いたことが確認できれば、客観的な事実に基づいて問題行動として注意できます。また、位置情報が把握されているとわかれば、サボり行為に対する抑止力にもなるでしょう。
危機管理
位置情報は、危機管理の場面でも有効です。
従業員の位置情報は、オフィス外での勤務中や業務時間外に地震などの災害が発生した場合に、居場所を特定するのにも役立ちます。
電話での連絡が困難な場合でも、従業員の居場所がわかれば現場の被災状況の把握や、現場から避難所やオフィス・自宅などへの距離や経路を確認してメールなどで取るべき行動を伝えることが可能です。
また、法人携帯の紛失や盗難にあった場合にも、位置情報がわかれば捜索の手がかりになります。
このように、法人携帯の位置情報を把握することは、危機管理の面でも効果を発揮します。
法人携帯の位置情報を確認する方法
法人携帯の位置情報を確認する方法には、大きく分けて次の2つの方法があります。
- キャリアが提供する位置情報サービス
- EMM・MDMツール
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キャリアが提供する位置情報サービス
一つ目は、キャリアが提供する位置情報サービスを利用する方法です。
「ドコモ」「au」「ソフトバンク」の3大キャリアでは、法人向けに、それぞれ3種類の位置情報サービスを提供しています。
- 現在の位置情報を取得
- 紛失した端末を検索
- 移動履歴を記録
各社の位置情報サービスのサービス名と主な特徴を紹介します。
ドコモ
種類 | 位置情報サービス | 主な特徴 |
位置情報取得 | かんたん位置情報サービス | GPS端末を人やモノに取り付けて簡単に位置情報を通知可能 |
紛失端末検索 | ビジネス端末レスキュー | 管理画面から位置情報検索、利用中断、ロック、初期化が可能 |
移動履歴記録 | あんしんマネージャー | 定期的に位置情報を取得し1ヶ月または100件まで保存 |
au
種類 | 位置情報サービス | 主な特徴 |
位置情報取得 | 位置情報ASPサービス DP2 PLS | メンバーの位置情報をリアルタイム把握できる業務効率化サービス |
紛失端末検索 | 位置検索サポート | 端末紛失時にパソコンまたはオペレーターがおおよその位置を検索可能 |
移動履歴記録 | KDDI Smart Mobile Safety Manager | 位置情報の履歴が最大100件まで確認可能 |
ソフトバンク
種類 | 位置情報サービス | 主な特徴 |
位置情報取得 | 位置ナビ一斉検索 | 一度に100人までの位置情報を管理者画面の地図上に表示 |
紛失端末検索 | 法人ケータイ紛失捜索サービス | 紛失や盗難時に端末のおおよその位置を検索可能 |
移動履歴記録 | ビジネス・コンシェル デバイスマネジメント | 定期的な位置情報の取得と移動履歴の記録 |
EMM・MDMツール
「EMM」「MDM」ツールの位置情報機能を利用する方法もあります。
EMMとMDMは、それぞれ次のようなツールです。
ツール | 正式名称 | 特徴 |
EMM | Enterprise Mobile Management | モバイル端末の安全で効率的な業務利用をサポートするツール群の総称 |
MDM | Mobile Device Management | EMMの中でも、業務用モバイル端末を一括で設定・管理する機能を持つツール |
EMMやMDMツールの中には、管理者による従業員の位置情報取得や、時系列での移動履歴記録などの機能を提供するものがあります。
EMM・MDMを利用することで、業務効率化や勤怠管理、危機管理への位置情報の活用が可能です。
以下の記事で、MDMの仕組みや選び方を詳しく解説していますので、ご興味のある方はご覧ください。
MDM(モバイルデバイス管理)とは?仕組みから選び方までわかりやすく解説します!
位置情報取得における注意点|トラブルを防ぐためにできること
ここまで解説してきたように、従業員の位置情報取得は、管理する側の企業にとって多くのメリットがあります。
一方で、位置情報を取得される側の従業員の中には、「常に監視されることへの不快感」や、「プライベートの行動も監視されることへの不安」などといった感情を抱く人も少なくないでしょう。
これらはごく当然の反応であり、企業側が軽く見て放置すると、従業員のモチベーションが低下したり、お互いの信頼関係が崩れるといった問題に発展しかねません。
従業員の位置情報を取得する際は、ロケーションハラスメントにならないよう、次にあるとおり、従業員の労働条件やプライバシーに十分配慮して導入しましょう。
GPSによる従業員の位置情報取得を適法に行うためには、時間、目的、態様という3つの観点から、次の条件を満たす必要があります。
- 業務時間内に限定すること
- 労務管理を目的とすること
- プライバシー侵害の態様でないこと
引用:企業の労働問題解決ナビ「GPSで社員の位置情報を取得することは違法なプライバシー侵害か」https://roudou-kigyou.com/gps-privacy/
3つの観点について、詳細と対策を解説します。
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業務時間内に限定すること
従業員の位置情報を取得するのは、業務時間内限りとしましょう。
従業員には、業務時間中の「職務専念義務」があるため、勤務実態を把握するために業務時間内の位置情報を取得することは合理性のある方法と言えます。
適切な位置情報の活用は企業側だけでなく、外回り社員の報告の負担を軽減したり、直行直帰をしやすくなったりと、社員にとってもメリットは多いでしょう。サボり癖のある従業員には、位置情報の取得が牽制にもなります。
一方、業務時間以外に従業員の位置情報を取得することに合理性はなく、違法と判断される可能性があります。そのため、位置情報取得を始める場合には、退勤後や休日の位置情報を取得しないための対策も合わせて行うことが必要です。
自社の社用携帯の利用実態に合わせて、次のような運用ルールを策定し、対象の従業員に周知するようにしましょう。
- 社用携帯を自宅に持ち帰らない
- 業務終了後は社用携帯の電源を切る
- 業務終了後は社用携帯の位置情報をオフにする (方法は後述)
みなし労働が無効になる場合も
オフィス外での勤務が中心の営業員に「みなし労働時間制」を適用している場合には、位置情報を取得することで適用対象外となる可能性があるため、注意が必要です。
「みなし労働時間制」とは、オフィス外で働く職種などで労働時間の算定が難しい場合に、所定の労働時間働いたものとみなす制度です。
位置情報を取得することで、実労働時間の把握が可能となった場合、みなし労働時間制の要件を満たさなくなる可能性があります。
実労働時間が把握できるにもかかわらず、不当にみなし労働制の適用を続けた場合、残業代未払いの問題に発展するリスクがあることを理解しておきましょう。
労務管理を目的とすること
従業員の位置情報取得は労務管理を目的とし、他の目的で使用しないことを明確化しましょう。
業務時間内であっても、企業の業務遂行に関係のない目的での位置情報利用は違法性を問われます。
位置情報の適切な活用例には、次のようなものがあります。
- 現場に直行直帰する従業員の実勤務時間を把握・管理する
- 外回りの営業員が業務外の場所に滞在していないことを確認する
- 外出先からの報告を不要とし業務効率化を図る
など
例え違法性のない利用であっても、行動を常に監視されるのは気持ちの良いものではありません。逐一、位置情報を持ち出して細かなことまで確認・注意するような職場は息苦しく、従業員のモチベーション低下を招きます。
位置情報の利用は必要最低限にとどめ、位置情報を使った厳しい監視は控えるようにしましょう。
プライバシー侵害の態様でないこと
取得した位置情報を、プライバシー侵害にあたる行為に利用してはいけません。
業務時間外の従業員の位置情報を取得し、その情報を使ってプライベートに立ち入る会話を行なったり、ハラスメント行為を行なったりするのは論外であり、もちろんプライバシー侵害にあたります。
また、業務時間内であっても、適度なタバコ休憩や、営業の合間の息抜き休憩、オフィス内でのトイレの時間などまで事細かに監視して指摘することは、ハラスメントと捉えられる可能性が高いでしょう。
位置情報の利用目的とともに、目的外のプライバシー侵害にあたる利用を行わないこともルールとして定めておきましょう。
そして、位置情報取得を始める前に、従業員に十分説明し理解を得ることが大切です。
法人携帯の位置情報をオフにする方法
業務時間外の位置情報を取得しないために、法人携帯の位置情報をオフにする方法を解説します。
適法な位置情報の取得は業務時間内に限られるため、従業員はプライバシーを守るため業務時間外は位置情報をオフにして問題ありません。業務時間内の取り扱いについては、各社の運用ルールを確認しましょう。
位置情報をオフにするには、次の2つの方法があります。
- 電源オフ
- 機内モード+GPSオフ
「GPSとは」の項で解説したとおり、スマホの位置情報はGPSだけではなく、基地局やWi-Fiからも取得されているため、GPSをオフにするだけでは十分ではありません。
また、機内モードだけだと、GPSは稼働します。(情報は送信されません)
機内モードに加えてGPSまでオフにすれば、一切の位置情報が取得されなくなります。
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